interview
 2009.04.01 UP DATE
オレはアーティストなんかじゃない。ひとコマ漫画家だ!


 私の目指す漫画とは、グローバルで古くならないものである。
グローバルであるためには、舞台が架空の国、または地域であるが、イメージとしてはヨーロッパ、アメリカになる。なぜなら、色々なマスメディアを通じて世界の人々がそれらの国の様子を良く知っているからだ。そういう訳で、私はそこでのモラル、習慣、風俗などを漫画のテーマにしている。
 私には日本をテーマにした作品もあるが、それはヨーロッパ等の青い目から観た日本であり、もし外国の人がそれを観てテーマの本当の意味が解らなくても、漫画として、また絵として成立する様に工夫して描かれている。日本人にしか解らない漫画は基本的には描かない。これには賛否両論あるだろうが、それが私の基本姿勢である。
 私は44年前、美術大学の彫刻科の学生であった時、日本のひとコマ漫画や世界の漫画を全く知らずに漫画を描き始めた。小さなアパートの一室で、どうしたら自分の漫画が世界の人々に解ってもらえるか考えたし、壮大な夢をみた。日本の読者のことなどは考えなかった。
 当時も今も、日本のマスメディアはひとコマ漫画に全く関心がなく、あったとしても政治漫画や似顔絵やタイムリーなものだけである。
 私はグローバルな視点で物を見ることを目指すため、この3つを描かないことにした。これらは日本ローカルで目まぐるしく変化し、すぐに古くなるからだ。世界の人々にとって、古くならなくて、人間の共通のテーマというと、根源的な愛、暴力、性、感情などの本能的なものであろう。それから、私は言葉を使わないことにした。言葉ごとにニュアンスがあり、これを翻訳すると更にうまくいかないものがあるからだ。漫画といえども絵である。キャプションを使えば簡単に漫画を解らせることができるが、頑張って絵だけで説得させることが漫画家のプライドであると私は思う。そのためには、どのような場面設定にするのか、どのような構図にするのか、どのようなキャラクターを選ぶか、どのようなスタイルで描くのか、それを工夫する。
 また、漫画家は色々なものをテーマにして描かなくてはならない。そのためには、ひとつの絵のスタイルだけでは表現しきれない。この漫画を解ってもらうには、三頭身のキャラクターを、これには八頭身を、また、こっちにはマンガチックな線を引き、こちらはリアルな描き方を・・・色彩に関しても、モノクロにしたり、カラーで仕上げたり、ペンを使い、筆を使い,墨を使い、絵の具を使い・・・と沢山の表現方法を考え、言葉(文字)に抵抗するためにあらゆる努力をする。さらに、テーマによっては、キャンバスに描いたり、立体にしたり、時には写真で表現して、人々に訴えている。この努力が漫画家にとって大切な事だと思う。基本的には、文字は漫画家にとって敵だと思っているからだ。スタイルがないのが私のスタイルである。
 表現方法を色々変えるので、人々に漫画家として名前を覚えてもらえない。私は、自分のアイディアを正確に解ってもらうために色々なスタイルを創り、使い分けているので、無理やり新しいスタイルを創っているのではない。
 漫画のアイディアがでる。その時、私はどんなスタイルで描こうかと考える。今まで自分の持っているものの中に、そのアイディアに合うものがあれば良い。もしなければそのアイディアが一番生きる方法、スタイルを考える。その一作に私は努力を惜しまない。
 また、テクニックという言葉がある。これは、きれいな線や色を上手に描くだけではなく、下手な線、稚拙な色使いが絵の内容を生かすということもあり、下手に描くということもテクニックだ。時には左手で描くことを勧める。
 漫画はアイディアにつきる。
プロフェッショナルとしては大きなダメージだ。しかし、私は人々に名前を覚えてもらうことよりも、その1枚の絵を見て欲しい。
 漫画だけでなく、絵画の世界でも、個性が叫ばれ、画家達は自分のスタイルを造るのにきゅうきゅうとし、無理に無理を重ねた絵を描いている。これは世界的なことで、私には理解できない。
 表現すべき内容があり、それを表現するのに適したスタイルがあると思う。内容にあったスタイル、これが一番大切なことで、内容がないのに、スタイルを造っても意味がない。ということは、内容の数だけスタイルがあってもかまわないことになる。絵を絵として考えるから解らないので、歌に置き換えれば、詩があり、それに合わせて音を作る。それで沢山の曲が生まれる。ひとつのメロディー、ひとつの絵のスタイルを守り続けても、新しいものを造ることはできない。
 とかく画家達は漫画家を見下している。画家達はひとつのアイディアで一生食えることもある。しかし、漫画家は毎日アイディアを出し続けなければならない。それが画家達に出来るであろうか。
 
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オレはアーティストなんかじゃない。ひとコマ漫画家だ!